プロダクトの優先順位づけで、機能そのものの良し悪し以上に難しいのが「誰の要望を優先するか」という社内の力学です。この記事では、社内ステークホルダーの声と顧客の声が対立したときの向き合い方を整理します。
社内の「声の大きさ」と顧客の「声の大きさ」は別物
経営陣や営業から「あの機能を早く作ってほしい」と言われることと、多くの顧客から同じ要望が独立して届くことは、本質的に別の情報です。前者は多くの場合、特定の商談や特定の顧客1社の状況を背景にしています。後者は、より広い顧客層に共通する課題である可能性を示しています。
どちらも無視すべきではありませんが、社内の声は物理的に「近く」で聞こえるため、実際の重みより大きく感じられがちです。この体感の差を自覚しておくことが最初の一歩になります。
経営・営業の要望を軽視していいわけではない
社内政治に負けない、というと社内の声を軽視することだと誤解されがちですが、そうではありません。経営陣は事業全体の数字を見ており、営業は個別商談の生の情報を持っています。どちらも顧客の声とは違う角度からの、価値のある情報源です。
問題は、情報源の違うこの2種類の声を、同じ土俵で「声の大きさ」だけで比較してしまうことです。経営・営業からの要望も、顧客からの要望と同じように「なぜそれが必要なのか」という理由を言語化してもらう。これができれば、出どころに関わらずフェアに比較できます。
判断基準を「誰が言ったか」から「なぜ求められているか」に移す
実務的な対策は、要望を扱う仕組みそのものを「誰が言ったか」ではなく「なぜ求められているか」を中心に設計することです。要望はすべて同じ場所に集約し、出どころ(顧客からの直接投稿か、社内経由の要望か)と理由をセットで記録します。
Feeduryでは、投稿された要望に対してAIが「誰が・何に困っていて・なぜ欲しいか」を要約する仕組みを収集フローに組み込んでいます。これは顧客からの直接投稿に対する機能ですが、考え方自体は社内経由の要望にも応用できます。「〇〇さんが言っていたから」ではなく「なぜその要望が出ているか」を記録に残す習慣が、声の大きさによる判断のブレを減らします。
記録に残すことが、一番効果的な防御策
社内政治で最も厄介なのは、「言った・言わない」「なぜ後回しにしたのか覚えていない」という記憶頼みの状況です。要望とその理由、優先順位づけの判断根拠を記録として残しておけば、後から「なぜあの要望を先にやったのか」を問われたときに、感覚ではなく記録で説明できます。
これは経営・営業への説明責任という意味だけでなく、PdM自身を「声の大きさに流された」という印象から守ることにもつながります。判断軸を明文化しておく発想は、要望を却下する場面でも同様に重要です(「"やらないことを決める"ための要望管理」で扱っています)。
小さいチームほど、この仕組みが効く
「社内政治」というと大企業特有の話に聞こえるかもしれませんが、5〜50名規模のスタートアップでも同じ構造は起きます。むしろ意思決定者と現場の距離が近い分、経営陣の一言がそのままロードマップを動かしてしまいやすいという側面もあります。個人開発や少人数のチームでは、PdM自身が営業やサポートを兼任していることも多く、「自分が聞いた声」と「顧客から直接届いた声」を無意識のうちに同列に扱ってしまいがちです。
要望を扱う場所を分けず、出どころと理由を必ずセットで残すというルールだけは、チームの規模に関わらず最初から決めておく価値があります。後から仕組みを整えようとすると、すでに記録されていない要望の理由を遡って復元するのは難しいためです。
まとめ
社内ステークホルダーの声と顧客の声は、どちらも軽視すべきではない一方で、同じ土俵で「声の大きさ」だけで比較すると判断がブレます。誰が言ったかではなく、なぜ求められているかを記録に残す仕組みを持つことが、社内政治に振り回されないための実務的な防御策です。実際の記録・要約の仕組みはデモボードで確認できます。